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Column 2025.11.01

暮らしの呼吸をつくる「窓」

設計士の檜垣です。

今回は、家づくりの中でも見落とされがちな「窓」について、設計の視点からお話ししたいと思います。


窓は、光や風を取り入れるだけでなく、外観の印象や暮らしの快適さを左右する大切な要素です。

どの位置に、どんな種類の窓を設けるかで、「明るくなるかどうか」だけではなく室内の居心地そのものが大きく変わります。

設計の打ち合わせでは、間取りや設備の話が中心になりやすいのですが、私はいつも「窓をどう配置するか」も同じくらい大切にしています。


窓の種類と、それぞれの役割

窓とひと口に言っても、実はたくさんの種類があるんです。

どのタイプにも暮らしの質を上げる特徴があり、部屋の用途や求める性能に合わせて選ぶのがポイント。対角線上に2つの窓を配置することで風通しがよくなる点も意識しましょう。

それでは、サンエーでお客様にご提案することが多い窓をご紹介します。

窓の種類

FIX窓
採光専用の開閉できない窓。景色を切り取る“額縁”のようなデザイン性が特徴です。価格的に比較的安価であることも魅力。

引き違い窓
左右1枚ずつの窓ガラスが横にスライドし、開閉できる窓。床から頭ほどの高さがある掃き出し窓、腰から頭ほどの高さがある腰高窓などがあります。開放感があり、バルコニーや庭との連続性を生み出すことができます。

すべり出し窓
風通しを得る効果が高い開口が少ない窓。縦すべり出し窓と横すべり出し窓があり、コンパクトな空間にも設置できるので水廻りや廊下など、様々な空間で使えます。

その他
FIX窓とたてすべり出し窓を組み合わせた「連窓」、FIX窓と引き違い窓を組み合わせた「片引き窓」などがあります。

種類を選ぶ時のポイント

わたしが気に入ってお客様にも良くおすすめしているのが「すべり出し窓」です。

特に水まわりや廊下など、コンパクトな空間でも通風を確保しつつ、開口が少ないので大きく開くと危ない場所でも活躍してくれます。

窓のストッパーは外すこともできるので、掃除がしやすい点もメリットです。


採光だけを目的とする場所では、開かない「FIX窓」もよく使います。

FIX窓は、「外の景色を切り取る額縁のよう」と表現されることが多い窓。見せたい景色を絞り込んで、空間を印象的に演出する用途にぴったりです。

開放感を出したい場所にはスタンダードな引き違い窓がおすすめ。

バルコニーや庭とつなげたい場所に設置することで出入りがしやすいのはもちろん、開放感も段違いです。

サンエーでは、すべり出し窓+FIX窓を掛け合わせた「連窓」をおすすめすることも多いです。

3階に設置した場合に非常用侵入口に替わる窓として使えるという点が、京都市内の限られた土地面積の中での家づくりでは大きなメリットとなるためです。

そのほかにも、

✅2階以上の子ども部屋で万が一の転落を防ぎたい

✅景観と風通しは欲しいが防犯として開口を狭くしたい

このような場所にはぴったりですので、是非検討してみてください。

性能と地域性

お家の中では、夏は涼しく、冬は暖かく過ごしたいですよね。快適な空間づくりには、窓のデザインだけでなく性能も非常に重要です。

例えば、「準防火地域」で建築する場合には、一定の防火性能があるという認定を受けている窓しか使えません。

サンエーの標準であるペアガラスにはガラスとガラスの間にできる空気層にアルゴンガスを封入しており、断熱性能をしっかりと確保しています。

より高い性能を求める方にはトリプルガラスの選択肢もあります。

こちらも空気層ができる部分にアルゴンガスやクリプトンガスを封入することができ、断熱性能はピカイチ。

ただ、サンエー標準の窓と比較すると価格はかなり高額になります。

京都のように寒暖差の大きい地域では、断熱性能の高いサッシを選ぶだけで冷暖房効率が変わるものの、寒冷地ほどの性能を出す必要があるかと言われると、わたしはそこまでは必要ない方が多いのではないかと考えています。

オーバースペックな設備に費用をかけてしまうと、その他の実現したいことを断念せざるを得ない状況になることも。

費用と性能のバランスは、地域性に照らして見極めましょう。

なお、京都で多く見られる準防火地域では、一定の防火性能を持つ窓を選ぶ必要があります。安全性を満たしながら、デザイン面でも納得できるように選定するのがポイントです。

防犯面を重視する方には「安全合わせ複層ガラス」という選択肢もあります。

見た目ではわかりにくいですが、ガラスの中に特殊フィルムが入っていて、万が一割られても貫通しにくい構造になっているのが特徴です。

フィルムが入る分、断熱性能も上がります。

また、開口部を26cm以内にすると人の侵入が困難となるため、防犯を重視する方にもすべり出し窓はおすすめです。

お部屋の用途に応じたおすすめの窓

ここでは、お部屋の用途に応じたおすすめの窓の種類をご紹介します。

「この部屋でどう過ごしたいかな?」と想像しながら、読んでみてくださいね。

リビング

リビングには、掃き出し窓や横滑り窓を組み合わせるのがおすすめ。

わたしは人の出入りが必要な場所に掃き出し窓を、子どもの転落防止や防犯を意識する場所には横滑り窓を採用することが多いです。

窓の前には家具が設置しづらいため、家具の配置と使いやすさを考慮しながら決めましょう。

バルコニーがある場合は、掃き出し窓を一つ設けておくと物品の搬入時などの動線がスムーズになります。

水まわり

水まわりは湿気がこもりやすいので、滑り出し窓がおすすめです。必要に応じて引き違い窓も選択肢に入ってきます。

プライバシー確保のために、型板ガラス(すりガラス)や高窓を選ぶことも多いです。

型板ガラスを後から透明ガラスにすることはできないので、迷っておられる場合は透明ガラスを選びフィルムを貼るなどされても良いでしょう。

吹き抜け

吹き抜け空間では、基本的にFIX窓を使います。高い位置に窓を設けると、光が柔らかく降り注ぎ空間が広く感じられるんです。

建築基準法上、3階建て住宅では消防法上の排煙機能のある窓の取り付けが必要なケースも。

採光や避難経路の基準が設けられており、窓の数・位置・大きさに制約が出るのでしっかりと打ち合わせましょう。

外観デザインとの調和

窓の配置は、外観デザインにも大きく影響します。

外観の印象は「窓の並び方」で決まる、と言っても過言ではありません。縦横のラインを揃えることで、整った印象になります。

窓がないと力強く端正なフォルムに
窓の端を揃え印象を整える

また、隣の家が建て替わったときに視線が気にならないよう、将来を見据えて配置を決めることも大切です。

設計段階で「今」だけを見るのではなく、10年先・20年先の暮らしを想像して窓の位置を決めることも、わたしが大切にしている考え方のひとつです。

コストと快適性のバランス

窓はたくさん付ければいいというものではありません。窓の数が多くなると、施工費や冷暖房効率にも影響が出ます。

数を抑えつつ必要な場所に必要な大きさで配置する、目的とコストのバランスが大切です。

特に南側の窓は大きくしたくなりますが、日射が強すぎて夏場に後悔することも。軒の出や庇で調整しながら快適な環境をつくりましょう。

おわりに

住まいの呼吸口とも言える「窓」は、光・風・景色を取り込み、家の中に四季を感じさせる存在。

窓をどう取るかで、家の表情も、暮らしの質も変わります。

間取りの打ち合わせで何気なく書き入れていると感じられがちな窓ですが、地域による規制や法律を加味しつつ、設計士としての意図や想いも込められている部分なんです。

家づくりの時には、機能や得たい景色を想像しながら緻密に計画したいですね。

聞き慣れない言葉も多くでてくると思うので、お打ち合わせの際は遠慮なさらず気になったことはどんどん聞いてくださいね。