サンエーの人 vol.4|平面図の、向こう側を想像する。ー プランコーディネーター・檜垣暢孝
全国の手仕事の現場を撮影・取材している、フォトグラファー・ライターの小黒恵太朗です。

京都で注文住宅を手がけるサンエーが、どのような想いを込めて家づくりに向き合っているのか…。つくり手の横顔を知ることは、より豊かな家づくりへの第一歩になると信じています。
サンエーの家づくりをより身近に感じていただけるような、そんな温度のあるコラムをお届けします。
第4回にご登場いただくのは、プランコーディネーターの檜垣暢孝さん。
ご契約後のお客様との打ち合わせから、間取りのプランニング、図面の作成、お見積もりまで……。「こんな暮らしがしたい」という想いを、形にしていくお仕事です。今回は、そんな檜垣さんの仕事への向き合い方を伺いました。
ものづくりへの憧れが、すべての始まり
檜垣さんは、滋賀県高島市の出身。幼い頃から絵を描いたり、ものを作ったりすることが好きだったといいます。
「建築をやりたいと思い始めたのは中学時代からですね。いつかは自分の家を建てたいという目標もありました」
地元の高校に建築学科が新設されたことも後押しとなり、建築の道へ。その後は芸術大学へと進学し、ものづくりへの見識を深めていきました。

前職の住宅会社には、10年以上にわたって勤務。そのうち半分ほどの期間は、お客様と直接打ち合わせを行う部署で経験を重ねました。
「SNSの普及とともに、お客様が思い描く暮らしのイメージは年々豊かになっていく感覚がありました。営業担当を介してご要望を聞くだけでは、お客様の細かなニュアンスまで拾いきれないこともあったんです」
そうした伝言ゲームのようなすれ違いを防ぐため、お客様と直接プランニングを進める部署が新設され、檜垣さんはそこで実践的なスキルを磨いていきました。
大きな船から、小さな船へ
数々の現場を経験してきた檜垣さんに転機が訪れたのは、サンエー代表・三谷さんからの声かけでした。
「元々いた会社は、従業員が150人を超えていました。だから、大きな船から小さな船へと乗り換えるような感覚でしたね」
すでに結婚されていた檜垣さんにとって、決断には迷いもあったといいます。しかし、奥様の後押しもあって挑戦の道を選び、2023年1月、サンエーでの新たなキャリアをスタートさせました。

入社当初は、檜垣さんにとってまさにゼロからのスタート。使い慣れた設計ソフトを導入するところから始め、一つひとつの現場をかたちにしていきました。「走りながら考えるような感覚で、がむしゃらにやっていましたね」と、笑顔で当時を振り返ります。

また当時のサンエーには、まだ決まった「標準仕様」がありませんでした。そのため、お客様とやり取りを重ねながら、ひとつひとつ丁寧に見積もりを出していったといいます。こうした仕事を重ねるうちに、少しずつ「サンエーらしい家」という軸が定まっていきました。
「『サンエーらしい建築をしてほしい』と、お客様からの期待もどんどん高まっているのを感じます。もちろん、そこにはしっかりと応えていきたいなと、身が引き締まる思いですね」
頭の中で家を「立体化」して考える
お客様の「こうしたい」という希望を、どのようにプランへ落とし込んでいくのか。そこには、檜垣さんならではのアプローチがあります。

「理想のイメージをお聞きしたら、その場で頭の中に立体として組み立ててみるんです。例えば『棚をつけたい』というご要望があったとき、平面の図面上では十分な広さに思えても、高さや奥行きまで考慮すると、実際には窮屈になってしまうことがあります。窓の位置にしても、その階だけでなく建物全体を踏まえて配置しなければ、外から見たときのバランスが崩れてしまいますよね」
こうした見落としを防ぐため、檜垣さんは会話の端々からヒントを見つけ、頭の中で完成図を組み立てながら打ち合わせを進めています。

またお客様にとって、「こんな雰囲気にしたい」というイメージを言葉で正確に伝えるのは簡単なことではありません。檜垣さんは、そうした感覚的なニュアンスを丁寧に整理し、具体的な形へと変換していきます。
「例えば『この壁をつくりたいのは、こちらのスペースを隠したいからですか?』と、僕から先に言葉にしてお聞きすることもあります。お客様に一から説明していただくというよりは、僕が提示した言葉をお客様に確認していただくプロセスの方が多いかもしれません」
それは自身が図面に落とし込むための確認作業であり、お客様の疑問をひとつずつ解消していく時間でもあります。
平面図の先に、お客様がどんな理想の暮らしを描いているのか。どれだけ丁寧に言葉を交わし、思いを共有できるか……。その対話の積み重ねこそが、檜垣さんの仕事の核となっています。
自分の「理想の暮らし」を大切にしてほしい
現在、インターネット上には「こんな間取りが正解」「この設備は必要ない」といった情報があふれています。檜垣さんは、そうした情報に振り回されすぎず、自分たちが本当に叶えたい暮らしを大切にしてほしいと話します。
「『SNSでこんな情報を見かけたのですが……』と気にされる方は、とても多いです。でも、立地や生活スタイルによって、正解は全然変わってくるんですよ。それに『これはダメなんだ』って、制限を感じながら進める家づくりって、きっとワクワクしないですよね。分からないことがあれば自分たちだけで悩まず、疑問を持ったまま打ち合わせに来ていただいて大丈夫です。お話ししているうちに、きっと解決できると思いますよ」

何気ない会話の中から、暮らしへの小さな願いをひとつずつ拾い上げていく。こうして頭の中に描かれたイメージは、平面図となり、やがて理想の詰まった一軒の家として形になっていきます。
幼い頃からものづくりが好きだった檜垣さん。あの頃夢中になった「つくる楽しさ」は今、サンエーの家づくりという形で生き続けているのです。
