西陣エリアの住みやすさ

京都の魅力を伝えるライター。
千葉県出身。20代の頃から京都に通い詰め、2016年に京都市左京区へ移住しました。
京都の歴史と魅力を伝える執筆活動と、自伝・自叙伝の執筆サポートをしています。
こんにちは。京都の魅力を伝えるライター・まる きょうこです。
このコラムは、京都市内で土地探しをしている方へ向けて連載しています。京都の各エリアについて、私が歩いて見つけた町の魅力や歴史、楽しみ方を詳しくお届けいたします。
今回ご紹介するのは、京都の伝統的な織物産業「西陣織」で知られ、古き良き京都の町並みを残す西陣エリアです。
西陣エリアについて

西陣は、京都市の北西部にあるエリアで、上京区から北区にかけて広がっています。
今出川通を中心に各方面へ向かう市バスが通っているため、移動にはバスがもっとも便利です。また、エリアの東側には京都市営地下鉄の今出川駅や鞍馬口駅、西側には嵐電の北野白梅町駅もあります。
昔ながらの景観が残る地域ですが、大通りを中心にスーパーやチェーン店なども揃っているので、日常の暮らしにも便利です。
西陣はどこからどこまで?
西陣エリアは行政区として存在するわけではないため、その範囲にはさまざまな説があります。おおよそ東は堀川通、西は七本松通、南は一条通または中立売通、北は鞍馬口通に囲まれた地域を指すようです。
また、さらに広く東は新町通、西は西大路通、南は丸太町通、北は北大路通までを西陣と呼ぶこともあります。
西陣の中心地といえるのが、今出川通と大宮通が交差するあたり。織物産業により、一日で千両に値する商売が行われていたことから「千両ヶ辻」とも呼ばれています。

周囲には西陣織に関連した店が多く建ち並び、生糸を運ぶ車が往来していたのだそうです。現在も「糸屋町」など、織物に関連した地名が残されています。
「西陣」のはじまりは応仁の乱
西陣の地名の由来は、室町時代にさかのぼります。当時発生した日本の内乱「応仁の乱」において西軍が陣地を構えたことから、この地が「西陣」と呼ばれるようになりました。
西軍の本陣かつ大将・山名宗全の邸宅跡には石碑が建っており、周辺には「山名町」という地名が付いています。

古代から国営の織物業が営まれていた土地
西陣といえば「西陣織」ですが、このエリアでは古代から織物が盛んでした。渡来人により織物の技術が伝わり、平安京のもとで国営の織物業が営まれていたのだそうです。
「西陣織」の名称で呼ばれるようになったのは、応仁の乱の勃発で避難していた職人たちが、再びこの地へ戻ってきた頃から。朝廷からも認められ、京都を代表する産業に発展していきました。
当時の織物職人たちの暮らしを伝えているスポットのひとつが、「三上家路地」です。織元の三上家が、職人たちを住まわせた織物長屋が現存し、ショップやギャラリーに利用されています。

当時の職人の住まいを知りたい方や、レトロな暮らしに憧れる方は、ぜひショップなどに立ち寄りながら路地を歩いてみてください。
このように風情ある町並みを残している西陣は、歩けば歩くほど愛着が湧いてくるエリアです。
西陣織に触れられるスポット
西陣織の伝統にもっと触れたくなったなら、以下の場所を訪れてみましょう。
まずは「手織ミュージアム織成舘」。西陣織の展示を楽しめるほか、隣接する製織工場の見学や手織り体験が可能なスポットです。

建物は織元の自宅兼住居をそのまま活用しており、織物の作業に適した織屋建の構造も見どころです。
次にご紹介するのは、「西陣織会館」。西陣織に関する史料が展示されており、西陣織の歴史を学べるスポットです。

また、生糸の元となる蚕の飼育展示があったり、西陣織の着物の着用体験ができたりと、さまざまな角度から西陣織に触れられます。
どちらのスポットも貴重な西陣織の文化を体験できるので、お子様の自由研究などにも活用できそうですね。
西陣織の商品を手に入れたい方は、「京都西陣織もりさん」を訪れてみてはいかがでしょうか。

1921年創業のもりさんは、西陣織のなかでも豪華な金糸や銀糸を使用した「西陣織金襴」を取り扱う織元です。
とくに人気なのが京人形で、2階のギャラリーには種類豊富な雛人形や五月人形が展示されています。店内にはエレベーターやベビーベッドなどもあるため、お子様連れでも安心して来店できますよ。
そのほか、西陣織を身近に感じられる小物の販売も充実しているので、ぜひ店内を覗いてみてください。
西陣のメインストリート千本通を「千ブラ」
織物産業で栄えた西陣では、南北をつらぬく千本通が活気のある繁華街となり、昭和には千本通をぶらぶら歩く「千ブラ」という言葉が流行ったほどでした。
現在の千本通にも商店街が残っており、今出川通を境に南が「西陣千本商店街」、北が「上千本商店街」となっています。

ここでは商店街にあるおすすめのスポットをご紹介しますので、かつての「千ブラ」気分でぜひ千本通を歩いてみてください。
映画館が密集していた西陣京極

千本通周辺には、30館ほどの劇場や映画館が建っていたのだそうです。なかでも中立売通に近い一角にある「西陣京極」は、映画館が集まっていた場所として知られています。
現在ほとんどの映画館は残されていませんが、周辺は昭和レトロな雰囲気が漂っています。昭和初期から営業している老舗の居酒屋などもあるので、ご夫婦で立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
西陣のレトロ喫茶店「静香」

千本通でもっとも古くからある喫茶店が、千本今出川にある「静香」です。店名の静香は、この場所に住んでいた芸妓さんの名前だったのだとか。戦前から残る店内の調度品に囲まれて、ノスタルジックな時間を過ごせます。
ホットケーキや、旬の果物がたっぷり入ったフルーツサンドが名物なので、お子様もきっと喜びますよ。
上千本商店街の老舗店でお買い物
上千本商店街には、昔ながらの漬物や和菓子店が並んでいます。お気に入りを見つけて、ご自宅の食卓で楽しんではいかがでしょうか。
「西陣風味」が名物の和菓子店「千本玉壽軒」
美味しい和菓子に出会えるお店が「千本玉壽軒」。

今出川通にある本家玉壽軒からのれん分けした店で、西陣織をモチーフにした和菓子「西陣風味」が名物です。
近隣には千本玉壽軒による茶寮「SENTAMA」もあり、職人が目の前で作る生菓子を抹茶とともにいただけます。
手作業で丁寧に作られた漬物が美味しい「近為本店」
西陣で漬物を購入するなら「近為本店」がおすすめ。

明治12年創業の老舗で、自家栽培の野菜を創業時から手作業で漬け続けているお店です。看板商品は「柚こぼし」。柚子とともに漬けた大根がさわやかな、近為オリジナルの漬物です。
店内の奥にはお座敷があり、坪庭を眺めながらいただけるお茶漬け会席を予約できます。ご夫婦でしっとりとした時間を過ごしたいときに、ぜひ活用してください。
料亭のおだしを手に入れられる「五辻の昆布」
昆布の専門店「五辻の昆布」も、明治時代から続く人気店。

こちらのだし昆布を仕入れている京都の料亭も多いのだとか。ご自宅で美味しいだしをとりたいときにはもちろん、ごはんのお供に嬉しい佃煮や、カジュアルなおやつ昆布など、昆布を使ったさまざまな商品を楽しめます。
また、店舗の2階では予約制のラーメン処「昆布と麺 喜一」を営業しており、昆布をふんだんに使った「昆布らぁめん」をいただけます。ただ食べるだけでなく、目の前でおぼろ昆布削りの実演があるなど、昆布の魅力を存分に楽しめるラーメン店です。
店名にある「五辻」は、店舗の南側にある五辻通に由来しています。五辻通もまた、老舗店が残るレトロな町並みが続いているので、ぜひご家族で散策してみてください。
通称で親しまれる西陣の寺院
西陣エリアでは地域の人々の生活に根ざした寺院が多く存在し、親しみを込めて通称で呼ばれる「通称寺」がたくさんあります。ここでは、西陣を代表する通称寺をいくつかご紹介しましょう。
不焼寺(本隆寺)

本隆寺は、度重なる火災に遭いながらも焼け残り、通称「不焼寺(やけずのてら)」と呼ばれている寺院です。1730年に西陣一帯で起きた大火「西陣焼け」では、本堂に安置されている鬼子母神像が女人の姿となって現れ、自ら井戸水をかけて本堂を守ったという「火伏せの伝説」が伝わっています。
また、本隆寺の四方を囲む土塀には、本堂の瓦を葺き替える際に不要となった古瓦が塗り込められています。

東西南北でそれぞれ土塀の雰囲気が異なり、とくに北側の土塀には独特の風情があり、西陣の町並みを引き立てています。
千本釈迦堂(大報恩寺)

大報恩寺は千本通のそばに建ち、釈迦如来坐像がご本尊であることから「千本釈迦堂」の通称で呼ばれています。
鎌倉時代創建の本堂は、応仁・文明の乱による戦火を免れて現存し、京都市内最古のものとして国宝にも指定されています。

本堂建立の際、大工棟梁の夫を支えた妻・おかめの伝説が残る寺院でもあり、春には本堂前に植えられている大きなしだれ桜「おかめ桜」が咲き乱れます。
おかめは別名「お多福」とも呼ばれ、節分の「福は内!」の語源でもあるのだとか。2月には、おかめの福にあずかれる節分の伝統行事「おかめ節分会」も行われています。
また12月には、無病息災の願いを込めた大根炊きで賑わうなど、季節ごとに楽しめる寺院です。
千本ゑんま堂(引接寺)

引接寺は閻魔法王をご本尊とする千本通沿いの寺院で、「千本ゑんま堂」の名で親しまれています。創建は平安時代にさかのぼり、この地が平安京三大葬送地のひとつ「蓮台野」への入口にあたることから、この世とあの世の境目で罪を裁く閻魔法王が祀られたのだそうです。
節分やゴールデンウィークの時期には、平安時代の大念仏会を起源とする伝統芸能「ゑんま堂狂言(千本えんま堂大念仏狂言)」の公演が行われます。ユーモアのあるわかりやすい演目で、大人から子どもまで楽しめるのだそうですよ。
釘抜地蔵(石像寺)

石像寺は、弘法大師空海が創建したと伝わる寺院です。ご本尊には、空海が刻んだ地蔵菩薩像が祀られ、心身の苦しみを象徴する釘を抜き取ってくれるご利益から、通称「釘抜地蔵」と呼ばれています。
願いが届いたときには、2本の釘と釘抜きを絵馬に張り付けて奉納する習わしがあります。本堂の壁いっぱいに並ぶ絵馬は圧巻で、人々からいかに信仰されてきたのかを感じられる風景です。
ほかにも西陣エリアには大小多くの神社仏閣が建ち並んでいますので、隠れたスポットを探して歩くのもきっと楽しいですよ。
伝統の息づく西陣エリアで丁寧な暮らしを
今回は、西陣エリアの魅力やおすすめスポットをご紹介しました。
西陣織の産地として発展し、現在もその伝統を継承する西陣エリア。懐かしい京都の風景が残るこの地域では、落ち着いた丁寧な暮らしができそうですね。
本記事でご紹介したスポットを参考に、ぜひ西陣エリアを歩いて、この地域の魅力を確かめてみてください。
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